ジンはジュニパーベリーが決め手の蒸留酒

ジンは、穀物などから造ったスピリッツに植物由来の香料で香りをつけた蒸留酒です。香りの原料となる植物素材は「ボタニカル」と呼ばれます。なかでもジュニパーベリー(西洋ネズの実)は、すべてのジンに欠かせないボタニカルです。

EU規則(Regulation 2019/787)では、アルコール度数37.5%以上でジュニパーベリーの香りが主体であることをジンの条件と定めています。日本の酒税法上の分類では「スピリッツ」に区分されます。

ジンの起源は16世紀のネーデルラント地方(現在のオランダ・ベルギー)にさかのぼります。当時「ジュネヴァ」と呼ばれる薬用酒として誕生し、17世紀にオランダ出身のウィリアム3世がイギリス国王に即位したことをきっかけにロンドンへ広まりました。

19世紀には連続式蒸留機が発明され、雑味の少ないクリアなスピリッツが造れるようになります。ボタニカルの香りを前面に出せるようになったことで、現在のドライジンのスタイルが確立されました。

ジンの個性を決めるのはボタニカルの組み合わせです。ジュニパーベリーを軸に、コリアンダーシード、アンジェリカルート、柑橘の果皮など、銘柄によって数種から十数種のボタニカルが使われます。同じ「ジン」でも銘柄ごとに香りがまったく異なるのは、このボタニカルの配合と蒸留方法が違うためです。ジンを含むスピリッツ全体の種類や特徴については「世界のスピリッツ大図鑑:種類と特徴で選ぶあなたの一杯」で詳しく解説しています。

ジンの種類と製法で変わる味わい

ジンは製法の違いによって複数の種類に分かれます。ここではEU規則(Regulation 2019/787)による3つの公式分類と、歴史的に重要な3つのスタイルを紹介します。

EU規定の3分類

EU規定では「ジン」「蒸留ジン」「ロンドンジン」の3カテゴリーが定義されており、この順に製法の条件が厳しくなります。

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ジン蒸留ジンロンドンジン
ベーススピリッツ農産物由来エタノール農産物由来(96%以上)農産物由来(高品質)
香りづけの方法方法を問わない蒸留器で再蒸留蒸留器で再蒸留(天然ボタニカルのみ)
蒸留後の添加香料・甘味料を加えられる香料・甘味料を加えられる加えられない(微量の甘味のみ許容)
アルコール度数37.5%以上37.5%以上37.5%以上

最も条件が厳しいロンドンジンは、蒸留後に人工香料や甘味料を加えることができません。「ロンドン」と名前にありますが、ロンドンで造る必要はなく、世界中どこでもこの製法条件を満たせばロンドンジンを名乗れます。市場で見かける定番ジンの多くはこのロンドンドライジンに該当します。

一方、最も条件がゆるい「ジン」カテゴリーにはエッセンスを混ぜるだけの製品も含まれます。蒸留の工程を経ないぶんコストが抑えられるため、安価なジンに多い製法です。

歴史的なスタイル

EU規定の3分類とは別に、製法や歴史的背景から生まれたスタイルがあります。

ジュネヴァは、ジンの原型となったオランダ・ベルギーの伝統的な蒸留酒です。モルトワインと呼ばれる麦芽由来のスピリッツをベースに造るため、穀物の風味が豊かに残ります。ウイスキーに近いコクのある味わいが特徴です。現在のドライジンがボタニカルの香りを前面に出すのに対し、ジュネヴァは穀物のまろやかさを軸にした別系統の蒸留酒といえるでしょう。

オールドトムジンは、18〜19世紀のイギリスで飲まれていたやや甘口のジンです。当時の蒸留技術ではスピリッツの雑味を完全に取り除けなかったため、砂糖を加えて飲みやすくしていました。

連続式蒸留機の普及でドライジンが主流になると一度は姿を消しましたが、近年はクラシックカクテルへの関心から復刻版が少数の蒸留所で造られています。トム・コリンズのベースとしても知られる銘柄です。

ネイビーストレングスは、アルコール度数57%以上のジンを指します。イギリス海軍では艦上で火薬と一緒に酒を保管しており、こぼれても火薬が発火する度数を維持する必要があったという逸話が広く知られています。57%という数値はイギリスの旧プルーフ体系で「100プルーフ」に相当する度数に由来しますが、「ネイビーストレングス」という呼称自体は1993年にプリマス・ジンが商業的に使い始めたものです。

高い度数のためボタニカルの香りが凝縮されており、トニックウォーターで割っても香りが薄まりにくいという実用的な利点もあります。

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4大ジンからジャパニーズジンまで銘柄の選び方

ジンは銘柄が非常に多いため、まずは「4大ジン」と呼ばれる定番銘柄を基準にすると選びやすくなります。いずれもロンドンドライジンに分類され、バーやレストランで最も広く使われている銘柄です。

ゴードンは4大ジンの中で最も長い歴史を持つ銘柄です。ジュニパーベリーの配合比率が高く、針葉樹を思わせるウッディで力強い香りが前面に出ます。ジンらしさを最もストレートに感じられるため、「ジンとはこういう味」という基準を掴むのに適しています。

ビーフィーターは、ジュニパーベリーの風味にレモンピールやセビルオレンジなど柑橘系のボタニカルを効かせた銘柄です。ゴードンほどジュニパーが突出せず、柑橘の華やかさとバランスが取れています。どの飲み方でもまとまりが良く、初めての一本にも適した銘柄でしょう。

タンカレーは、使用するボタニカルをわずか4種に絞り込んでいます。余計な香りを排したドライでシャープな味わいが特徴です。他の材料と混ぜても骨格が崩れにくく、マティーニをはじめとするカクテルのベースとして高く評価されています。

ボンベイサファイアは、4大ジンの中で最も新しい銘柄です。10種のボタニカルの香りを、アルコールの蒸気を通して抽出する独自の製法を採用しています。ボタニカルを液体に直接浸す他の3銘柄と比べると、軽やかで繊細な香りが特徴です。ストレートやロックなど、香りをそのまま楽しむ飲み方に向いています。

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銘柄創業味わいの傾向向いている飲み方
ビーフィーター1820年柑橘とジュニパーのバランス型万能(どの飲み方にも合う)
タンカレー1830年キレのあるドライな味わいマティーニなどカクテル全般
ゴードン1769年ジュニパー主体で骨太ストレート、カクテル全般
ボンベイサファイア1987年10種のボタニカルによる華やかな香りストレート、ロック

クラフトジンとジャパニーズジン

近年は、少量生産で個性的なボタニカルを使うクラフトジンが世界的に増えています。日本でも和素材をボタニカルに取り入れたジャパニーズジンが数多く登場し、注目を集めるようになりました。

サントリーの「翠(SUI)」は柚子・緑茶・生姜の3つの和素材を使い、食事に合わせやすいすっきりした味わいに仕上げています。ソーダ割りで飲む「翠ジンソーダ」が定番の楽しみ方です。

同じくサントリーの「六(ROKU)」は桜花・桜葉・煎茶・玉露・山椒・柚子の6種の和ボタニカルを使い、より繊細で重層的な香りが楽しめます。翠がソーダ割りでの手軽さを打ち出しているのに対し、六はストレートやロックで香りの奥行きをじっくり味わうのに適した銘柄です。

クラフトジンは個性が強いものも多いため、まず4大ジンでジンの基本的な味わいを知ってから試すと、それぞれの銘柄がどのような方向に個性を伸ばしているかがわかりやすくなります。

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ストレートからソーダ割りまでジンの飲み方

ジンはアルコール度数40%前後のスピリッツですが、割り方や温度を変えるだけでボタニカルの感じ方が大きく変わります。ここではカクテルを除いた基本の飲み方を4つ紹介します。

ストレート

ストレートは、ジンをそのまま何も加えずに飲む方法です。ボタニカルの香りを最も豊かに感じられるため、銘柄の個性を知りたいときに適しています。

常温のまま小さめのグラスに少量注ぎ、まず香りを確かめてからひと口含みます。口の中でアルコールが揮発するとともにボタニカルの香りが鼻に抜け、銘柄ごとの個性がはっきりとわかるでしょう。

アルコール度数が40%前後あるため、口直し用の水を用意しておくと安心です。新しい銘柄を試すときは、まずストレートでひと口味わってから他の飲み方に移ると、その銘柄の特徴を把握したうえで楽しめます。

ロック

ロックは、大きめの氷を入れたグラスにジンを注ぐ飲み方です。氷が少しずつ溶けることでアルコール度数が徐々に下がり、時間の経過とともに変化する香りと味わいを楽しめます。

注いだ直後はストレートに近い力強い味わいです。数分経つと氷が溶けて加水が進み、隠れていたボタニカルの甘みや柔らかさが顔を出します。この変化を楽しめるのがロックの醍醐味でしょう。

氷が早く溶けると薄まりすぎるため、できるだけ大きな塊の氷を使うのがポイントです。コンビニなどで売っているロックアイスよりも、製氷皿で大きく作った氷のほうが溶けにくく適しています。

水割り

水割りは、ジンに常温の水を加える飲み方です。加水するとアルコールの刺激がやわらぎ、ストレートでは気づきにくかったボタニカルの香りがおだやかに開きます。

ジン1に対して水1〜2の割合が目安です。水の量が多いほど飲みやすくなりますが、薄めすぎると香りが感じにくくなります。まずは1:1から試して、好みの濃さを探ってみてください。

使う水は軟水がおすすめです。硬水に含まれるカルシウムやマグネシウムはジンの繊細な香りを覆い隠す場合があります。軟水であればボタニカルの風味がそのまま活きるでしょう。

ソーダ割り(ジンソーダ)

ソーダ割りは、ジンを無糖の炭酸水で割る飲み方です。炭酸の刺激がボタニカルの香りを押し上げるため、すっきりとした爽快感のある味わいになります。

食事の味を邪魔しにくいのがソーダ割りの強みです。甘味や苦味のある割り材を使わないため、和食や魚料理など繊細な味わいの料理とも合わせやすく、食中酒に向いています。

ジャパニーズジンの「翠」はこの飲み方を前提に設計されており、柚子と生姜の香りがソーダの泡とともに広がります。炭酸が抜けないよう、混ぜるのは軽く一回だけにとどめてください。

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飲み方ジン:割り材アルコール感ボタニカルの香りおすすめのシーン
ストレート強い最も豊かに感じる銘柄の個性を知る
ロックやや強いしっかり感じるゆっくり楽しむ
水割り1:1〜2穏やかおだやかに広がるじっくり味わう
ソーダ割り1:3〜4穏やかすっきり引き立つ食事中

まずジンを一本、試してみよう

ジンは種類も銘柄も多いお酒ですが、最初の一歩はシンプルです。

まだジンを飲んだことがなければ、ビーフィーターかゴードンを一本選んでみてください。どちらも1,000円台で手に入り、ジンの基本的な味わいを過不足なく伝えてくれます。

ビーフィーターは柑橘の華やかさとジュニパーのバランスが良く、ゴードンはジュニパーの力強さをストレートに感じられます。好みがわからなければ、バランス型のビーフィーターから始めるのが無難です。

飲み方は、まずストレートでひと口味わって銘柄の個性を確かめてから、ソーダ割りやロックなど好みのスタイルで楽しむのがおすすめです。ジンの基本の味がわかると、カクテルの楽しみ方も変わります。ジントニックやマティーニを試すとき、ベースのジンが味わい全体にどう効いているかが感じ取れるようになるでしょう。