ブランデーは飲み方ひとつで、華やかな果実の香りにも、すっきりした爽快感にもなるお酒です。その違いを引き出す鍵は「温度」と「加水」に加えて、もうひとつ「ランク(熟成度)」があります。VSにはVSの、XOにはXOの、それぞれに合った飲み方があるのです。この記事では基本の飲み方6種類をランク別のおすすめとともに解説します。自分のブランデーに合った一杯を見つけてみてください。
ブランデーは飲み方ひとつで、華やかな果実の香りにも、すっきりした爽快感にもなるお酒です。その違いを引き出す鍵は「温度」と「加水」に加えて、もうひとつ「ランク(熟成度)」があります。VSにはVSの、XOにはXOの、それぞれに合った飲み方があるのです。この記事では基本の飲み方6種類をランク別のおすすめとともに解説します。
ブランデーの飲み方はランクで変わる
ブランデーのラベルに記された「VS」「VSOP」「XO」などの等級は、原酒の最低熟成年数を示しています。コニャックの場合、この基準はBNIC(Bureau National Interprofessionnel du Cognac:全国コニャック事務局)が定めており、熟成年数は「コント」という単位で管理されています。コントは蒸留完了翌年の4月1日を起点に数え、コント2以上がVS、コント4以上がVSOP、コント10以上がXOに格付けされます。各等級の詳細は「ブランデー格付けの教科書:ランクとコントの違いから読み解く熟成の秘密」で解説しています。
熟成が進むほどアルコールの刺激がやわらぎ、樽由来のバニラやカラメルの香りが加わって味わいが複雑になります。つまり、ランクが上がるほどシンプルな飲み方で十分に美味しく、ランクが若いほど割り材の力を借りると持ち味が活きるのです。
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| ランク | 最低熟成年数 | 味わいの傾向 | おすすめの飲み方 |
|---|---|---|---|
| VS | 2年 | フルーティで若い果実感。アルコールの刺激がやや強い | ソーダ割り、カクテル |
| VSOP | 4年 | バランスが取れ、バニラやスパイスが加わる | ロック、トワイスアップ |
| XO | 10年以上 | 複雑でまろやか。ドライフルーツや革の熟成香 | ストレート |
この対応関係を覚えておけば、手元のブランデーに合った飲み方をすぐに選べます。ここからは、それぞれの飲み方で味わいがどう変わるのかを詳しく見ていきましょう。
ブランデーの基本の飲み方6選
以下の表は6つの飲み方を温度・加水・味わいの傾向で整理したものです。
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| 飲み方 | 温度 | 加水 | アルコール度数の目安 | 味わいの傾向 |
|---|---|---|---|---|
| ストレート | 常温(18〜22℃) | なし | 40% | 香りと味わいをそのまま堪能 |
| トワイスアップ | 常温 | 1:1(常温水) | 20% | 香りが最も開く |
| ロック | 冷(氷で徐々に変化) | 少量(氷の溶解) | 30〜40% | 時間とともに変化を楽しめる |
| 水割り | 常温〜冷 | 1:1〜1:2 | 13〜20% | まろやかで飲みやすい |
| ソーダ割り | 冷 | 1:3(炭酸水) | 10% | 爽快でフルーティ |
| お湯割り | 温(50〜60℃) | 1:2(お湯) | 13% | 甘い香りが豊かに立ち上がる |
ここからは各飲み方の特徴と、なぜそのような味わいになるのかを掘り下げます。
ストレート
ストレートは、ブランデーをそのまま何も加えずに飲む方法です。グラスに30〜40mlを注ぎ、まず色合いを眺め、次に香りを楽しみ、少量ずつ口に含みます。
ブランデーの香りは100種類以上の香気成分が重なり合ってできています。ストレートではこの複雑な香りをそのまま感じ取れるため、長期熟成のXOやナポレオンクラスに最も適した飲み方です。樽由来のバニリンや、長期熟成で生まれる枯れた果実のような芳香「ランシオ」は、加水すると薄まりやすいため、ストレートで味わうのが理にかなっています。
ストレートで飲むときはチェイサー(水)を必ず用意してください。アルコール度数40%を水なしで飲み続けると味覚が麻痺しやすく、せっかくの複雑な香りを見逃してしまいます。チェイサーの効果については後述します。
トワイスアップ
トワイスアップは、ブランデーと常温のミネラルウォーターを1対1で割り、氷を入れずに飲む方法です。プロのブレンダーがテイスティングに使う手法でもあります。
加水すると香りが「開く」のには科学的な根拠があります。2017年にスウェーデン・リンネ大学が学術誌Scientific Reportsに発表した研究では、蒸留酒に水を加えるとグアイアコールなどの香り成分が液面に集まりやすくなることが分子シミュレーションで示されました。
そのメカニズムはこうです。アルコール度数が高い状態では、香り成分がエタノール分子のクラスターに取り込まれて液中に閉じ込められています。加水によってこのクラスターが崩れると、香り成分が液面へ移動し、揮発しやすくなるのです。
出典:Björn C. G. Karlsson & Ran Friedman
"Dilution of whisky – the molecular perspective"
Scientific Reports, 2017

トワイスアップを作るときは常温の水を使ってください。冷水ではブランデーとなじむのに時間がかかり、温度が下がって香りの揮発も抑えられてしまいます。VSOPクラスのブランデーで試すと、ストレートでは気づけなかったフルーツやスパイスの香りが現れることがあるでしょう。
ロック
ロックは、グラスに大きめの氷を入れてブランデーを注ぐ飲み方です。
ロックの魅力は時間とともに味わいが変化する点にあります。注いだ直後はストレートに近い力強い風味を感じ、氷が溶けるにつれてアルコール度数が下がり、口当たりがやわらかくなっていきます。冷却によってエタノールの揮発が抑えられるため、アルコールの刺激臭が減り、甘みや果実味が感じやすくなるでしょう。
氷は大きいものを使うのがコツです。氷は表面から溶けるため、大きな塊ほど溶けにくくなります。細かい氷はすぐに水っぽくなりますが、大きなロックアイスなら味の変化をゆっくり楽しめます。丸氷があれば理想的でしょう。
ロックに最も合うのはVSOPクラスのブランデーです。適度な熟成感がありつつ、冷却で角が取れてさらに飲みやすくなります。
水割り
水割りは、ブランデーに冷たい水または常温の水を加えて割る飲み方です。基本の比率はブランデー1に対して水1〜2です。
水で割るとアルコール度数が13〜20%まで下がり、ワインや日本酒に近い感覚で飲めます。ブランデーの甘みが引き立つのも水割りの特徴です。アルコールの刺激が和らぐことで、それまで隠れていた果実由来の甘みやうまみを感じ取れるようになります。
水は軟水が適しています。硬水に含まれるミネラル分はブランデーの繊細な風味を覆い隠してしまいますが、軟水ならブランデーの個性をそのまま引き出せます。日本の水道水はほとんどが軟水なので、浄水器を通せば十分でしょう。
ソーダ割り(フレンチハイボール)
ソーダ割りは、ブランデーを炭酸水で割る飲み方です。コニャックで作るソーダ割りは「フレンチハイボール」とも呼ばれ、近年人気が高まっています。基本の比率はブランデー1に対して炭酸水3です。
ウイスキーのハイボールとの違いはフルーティさにあります。ブランデーの原料はブドウなどの果実であるため、炭酸の泡が果実由来の香り成分を持ち上げ、華やかでフルーティな香りが際立ちます。アルコール度数はおよそ10%とビールに近い飲みやすさで、食事との相性も良い飲み方です。
美味しくつくるコツは3つあります。
- グラスにたっぷりの氷を入れ、先にブランデーを注いでかき混ぜて冷やしてから、炭酸水を加えてください。
- 炭酸水は強炭酸タイプを選んでください。ブランデーを加えると炭酸が弱まるため、最初から強めを使っておくとちょうどよい爽快感が残ります。
- かき混ぜは縦に一回だけにしてください。混ぜすぎると炭酸が抜けてしまいます。
VSクラスのブランデーはソーダ割りに最適です。若い原酒のフレッシュな果実感が炭酸で引き立ち、アルコールの棘も和らぎます。レモンやオレンジの皮を添えると、さらに華やかになるでしょう。
お湯割り
お湯割りは、ブランデーにお湯を加えて割る飲み方です。基本の比率はブランデー1に対してお湯2です。
温度が上がるとブランデーに含まれるエステル類などの香気成分の揮発が活発になり、果実の甘い香りが豊かに立ち上がります。ストレートやロックでは感じにくかった奥行きのある風味を楽しめるのが、お湯割りならではの魅力です。
お湯の温度は70〜80℃が目安です。沸騰直後の100℃ではエタノール(沸点78.3℃)の揮発が激しくなりすぎて、アルコールの刺激臭が前面に出てしまいます。やかんで沸かしたお湯を少し冷ますか、ポットの設定温度を下げておくとよいでしょう。
お湯を先にグラスに注ぎ、あとからブランデーを加えるのがポイントです。ブランデーはお湯より比重が軽いため上に浮き、自然に対流が起きて混ざり合います。逆にブランデーを先に入れてお湯を注ぐと、急な加熱でアルコールが一気に揮発し、ツンとした刺激が立ちすぎてしまいます。
ミルクで割るのもおすすめです。70〜80℃に温めた牛乳でブランデーを割ると、ブランデーの甘みとミルクのまろやかさが調和し、寝る前の一杯にぴったりの味わいになります。
ブランデーならではの飲み方
ブランデーには、他の蒸留酒にはない独特の楽しみ方があります。バーで注文するもよし、自宅で試すもよし、ブランデーの奥深さを感じられる飲み方を紹介します。
カフェロワイヤル
カフェロワイヤルは、コーヒーにブランデーの風味を加える飲み方です。「王の」を意味するロワイヤルの名を冠した飲み方で、ナポレオン・ボナパルトが愛飲したという逸話でも知られています。
作り方はシンプルです。まず、カップにブラックコーヒーを注ぎます。次にロワイヤルスプーンと呼ばれる専用のスプーンをカップの縁にかけ、角砂糖を乗せてください。
角砂糖にブランデーをたっぷり染み込ませたら、ライターで火をつけます。青白い炎が角砂糖の上で揺らめき、ブランデーのアルコール分が燃えながら砂糖をカラメル化させます。炎が消えたら、溶けた角砂糖をコーヒーに落としてかき混ぜれば完成です。
ブランデーの芳醇な香りとコーヒーの苦みが調和し、カラメルの甘みがアクセントになります。部屋を少し暗くすると、青い炎の演出を一層楽しめるでしょう。
ニコラシカ
ニコラシカは、ドイツ・ハンブルク生まれの「口の中で完成するカクテル」です。
リキュールグラスにブランデーを注ぎ、輪切りのレモンスライスを蓋のように乗せ、その上に砂糖をこんもりと盛ります。飲むときは、まず砂糖の載ったレモンを手で取り、二つ折りにして口に含みます。砂糖の甘みとレモンの酸味が口の中に広がったところで、ブランデーを一気に流し込んでください。
甘味、酸味、ブランデーのアルコールの熱が口の中で一気に混ざり合い、ブランデーサワーのような味わいが生まれます。噛むたびに味のバランスが変わっていく体験は、ニコラシカならではのものです。
ホットブランデー・トディ
ホットブランデー・トディは、ブランデーにお湯とスパイスを合わせた温かいカクテルです。イギリスやアメリカでは風邪のときの家庭薬としても親しまれてきました。
温めたグラスに角砂糖1個を入れ、少量のお湯で溶かします。ブランデー45mlを注ぎ、70〜80℃のお湯を適量加えてください。お湯割りと同様に、沸騰直後の熱湯ではアルコールの刺激臭が立ちすぎるため、少し冷ましたお湯を使うのがポイントです。仕上げにレモンスライスとシナモンスティックを添えれば完成です。
シナモンやクローブに含まれるオイゲノールやシンナムアルデヒドといったスパイスの香気成分は、ブランデーの樽熟成で生まれるバニリンなどのバニラ系香気成分と同じ芳香族化合物の仲間です。そのため両者は自然に調和し、甘く奥行きのある香りを生み出します。温かいお湯がこれらの成分の揮発を促し、一口ごとに豊かなスパイス香が広がるでしょう。
ブランデーを美味しく飲むための3つのコツ
ここまで紹介した飲み方を、さらに美味しくするためのコツを3つ紹介します。
グラスはチューリップ型を選ぶ
ブランデーグラスといえば、丸く膨らんだ大型のスニフターを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし現在、ブランデーの香りを最も引き出せるグラスとして専門家が推奨しているのはチューリップ型のテイスティンググラスです。
チューリップ型は小ぶりのボウルと長めのステム(脚)が特徴です。ボウルが小さいことでブランデーが空気に触れる面積が適度に抑えられ、香り成分の過度な揮発を防ぎます。口がすぼまっているため揮発した香りがグラスの中に集中し、鼻に効率よく届きます。長いステムは手の体温がブランデーに伝わるのを防いでくれます。

スニフターは大きなボウルを手で包んで温めやすい反面、ブランデーの香りだけでなくアルコールの刺激臭も集めてしまいます。タンブラーは広口で香りこそ逃げやすいものの、氷や炭酸水を扱いやすいためロックや水割り、ソーダ割りに向いています。
ストレートやトワイスアップで香りを楽しむなら、まずチューリップ型を1脚用意するのがおすすめです。
適温は18〜22℃を目安にする
スニフターのボウルを手のひらで包み込んで温めるのは、ブランデーの伝統的な作法として知られています。マルテルなど大手コニャックメーカーも手で穏やかに温める方法を推奨しており、現在も広く行われている飲み方です。
ただし、温めすぎには注意が必要です。手で温めると液温が25℃以上に上がりやすく、エタノールの揮発が急激に増加します。エタノールの沸点は78.3℃ですが、温度が上がるほど蒸気圧は指数関数的に高まるため、20℃から30℃に上がるだけでも揮発量は大幅に増えます。その結果、鼻を突く刺激臭がブランデーの繊細な香りを覆い隠してしまうことがあります。
香りを最も楽しめる適温の目安は18〜22℃です。XOなど長期熟成品はやや高めの20〜22℃でも複雑な香りが開きやすくなります。チューリップ型グラスを使う場合はステム(脚)を持ち、スニフターを使う場合は手のひらで軽く包む程度にとどめて、ゆっくりと温度を上げていくのがよいでしょう。
チェイサーを用意する
ブランデーをストレートやロックで飲むときは、チェイサーとして常温の水を必ず用意してください。
ブランデーを一口飲んだあとに水を含むと、アルコールで鈍った味覚がリセットされ、次の一口でまた新鮮に香りや味わいを感じ取れます。アルコール度数40%の蒸留酒を水なしで飲み続けると、3口目あたりから舌が刺激に慣れてしまい、せっかくの複雑な風味を見逃してしまいます。
チェイサーはブランデーの味わいを薄めるためではなく、味覚をリフレッシュして一杯を長く楽しむための道具です。
ブランデー初心者はソーダ割りから始めよう
ブランデーの飲み方に迷ったら、まずはソーダ割り(フレンチハイボール)から試してみてください。アルコール度数が10%程度まで下がって飲みやすく、ブランデーならではのフルーティな香りをしっかり感じられます。
慣れてきたら、少しずつ加水量を減らしてロックやトワイスアップに進んでみてください。同じ銘柄でも飲み方を変えるだけでまったく違う表情を見せてくれるのが、ブランデーという蒸留酒の面白さです。
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| こんなときは | おすすめの飲み方 |
|---|---|
| ブランデーを初めて飲む | ソーダ割り |
| 食事と一緒に楽しみたい | ソーダ割り、水割り |
| 香りをじっくり楽しみたい | トワイスアップ、ストレート |
| 時間をかけて変化を楽しみたい | ロック |
| 寒い日に温まりたい | お湯割り、ホットブランデー・トディ |
| 演出を楽しみたい | カフェロワイヤル、ニコラシカ |
ブランデーのランクや等級について詳しく知りたい方は「ブランデー格付けの教科書:ランクとコントの違いから読み解く熟成の秘密」もあわせてご覧ください。他の蒸留酒の飲み方も気になる方は「ウイスキーの飲み方7選 - 味が変わる理由とおすすめの選び方」も参考にしてみてください。