日本の酒税法と「お酒」の法的定義

日本酒・ワイン・ビールとお酒には多くの種類がありますが、日本において、お酒の種類は「酒税法」と更に詳細な事項を定めた「酒税法施行令」によって明確に定義されています。

一般的に「お酒」と呼ばれるものは、法律上では「酒類」と呼ばれ、酒税法 第二条で「アルコール分が1度以上の飲料」と定義されています。ここでいうアルコール分とは、温度15度における容量比で表されるエチルアルコールの含有量を指します。

日本の酒税法は、酒類に課せられる税金を規定するための法律で、酒類の製造、販売、流通に関する税制を定めています。この法律の目的は、税金を公平に集めることや、お酒の市場を整理すること、そして消費者を守ることです。

酒税法は明治時代に制定され、以来、国の重要な財源確保の手段として機能してきました。昭和28年に大幅な改正が行われ、現在の酒類区分の基礎が形作られました。この法律により、日本国内で製造・販売されるお酒は全て何らかの区分に属することになります。

日本の酒税法は世界的に見ても細かい分類体系を持っており、これが日本の酒文化の多様性を支える基盤となっています。

製法で分ける4種類のお酒の基本分類

日本の酒税法では、お酒をその製法によって「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」という3つに分類しています。さらにそこへ市場の消費態様を考慮して作られた分類である「発泡性酒類」を足して、全4つが酒税法上のお酒の基本分類になります。

基本分類の下には更に細かく種類が分類されており、基本分類の概要と各々に分類される酒類は次の通りです。

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基本分類概要種類
発泡性酒類炭酸ガスを含有しており、開栓時に炭酸の泡が立つ特徴を持つお酒ビール
発泡酒
その他の発泡性酒類
醸造酒類原料に含まれる糖分を酵母によって発酵させて作られるお酒清酒
果実酒
その他の醸造酒
蒸留酒類発酵液を加熱・蒸留して作られるお酒連続式蒸留焼酎
単式蒸留焼酎
ウイスキー
ブランデー
原料用アルコール
スピリッツ
混成酒類各種酒類を混合したり、糖類や香料などを加えたりして作られるお酒合成清酒
みりん
甘味果実酒
リキュール
粉末酒
雑酒

発泡性酒類

発泡性酒類には醸造酒である「ビール」「発泡酒」と「その他の発泡性酒類」が含まれており、各々の定義は次の通りです。

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種類定義
ビールアルコール20度未満 かつ 以下のいずれかの条件を満たすもの
・麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたもの
・麦芽、ホップ、水、麦、政令で定める物品を原料として発酵させたもの
・上記2種の酒類にホップを加えて発酵させたもの
・上記2種の酒類に政令で定める物品を加えて発酵させたもの
 *麦芽はホップ・水を除く原料の重量50%以上
 *政令で定める物品は麦芽の重量の5%未満
発泡酒アルコール20度未満 かつ 発泡性を有するもの かつ 以下のいずれかの条件を満たすもの
・麦芽または麦を原料の一部とした酒類
 *アルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く
・ホップを原料の一部としたもの
・財務省令で定める苦味料を原料の一部としたもの
・香味、色沢、性質、状態がビールに類似するものとして政令で定めるもの
その他の発泡性酒類アルコール10度未満 かつ 発泡性を有するもの

ビールと発泡酒はよく似ていますが、大きく違う点が2つあります。ひとつめが麦芽の使用量です。ビールは50%以上と定められていますが、発泡酒は特に定められていません。発泡酒の多くは麦芽を米・とうもろこし・でんぷん・糖類などの副原料に代替して製造されています。ふたつめが原材料です。ビールでは麦芽とホップの両方を使用することが求められますが、発泡酒は麦芽とホップの両方が含まれていなくても問題ありません。そのため、ビールには麦芽とホップ由来の豊かな香りと深いコクがあるのに対し、発泡酒は軽やかな味わいが特徴になっています。

醸造酒類

醸造酒類には「清酒」「果実酒」「その他の醸造酒」が含まれており、各々の定義は次の通りです。

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種類定義
清酒アルコールが22度未満 かつ 以下のいずれかの条件を満たすもの
・米、米麹、水を原料として発酵させて、こしたもの
・米、米麹、水、清酒かす、政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの
 *政令で定める物品は米と米麹の重量の50%以内
・清酒に清酒かすを加えて、こしたもの
果実酒アルコールが20度未満 かつ 以下のいずれかの条件を満たすもの
・果実または果実、水を原料として発酵させたもの
・果実または果実、水に糖類を加えて発酵させたもの
・上記2種に糖類を加えて発酵させたもの
・上記3種にブランデー、アルコール・スピリッツ、糖類、香味料、水のいずれかを加えたもの
 *酒類を追加する場合、加えたあとのアルコールの総量の10%以内
・上記4種に政令で定める植物を浸してその成分を浸出させたもの
その他の醸造酒以下のすべての条件を満たすもの
・アルコール分20度未満
・穀類、糖類、その他の物品を原料として発酵させたエキス分(*)が2度以上
 *原容量100㎤中に含有する不揮発性成分のグラム数

清酒とはいわゆる「日本酒」のことを指します。厳密にいうと「清酒の製法品質表示基準」という規定により、清酒の中でも原料の米に国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒に限り、「日本酒」と表示してもよいことになっています。近年では海外で作られた清酒が「SAKE」として流通しており、レビューサイトなどでは海外の日本酒と紹介されていますが、規定に則ると日本酒と名乗ることはできません。

果実酒というと、みかんや桃のお酒を思い浮かべると思いますが、ブドウから作られる「ワイン」をはじめ、リンゴを発酵させた「シードル」、梅を漬け込んだ「梅酒」などの果実を原料とした様々な酒類が「果実酒」に含まれます。というのも、法律上は特定の果実による酒の種類はわけられておらず、一括りに果実酒となっているからです。

蒸留酒類

蒸留酒類には「連続式蒸留焼酎」「単式蒸留焼酎」「ウイスキー」「ブランデー」「原料用アルコール」「スピリッツ」が含まれており、各々の定義は次の通りです。

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種類定義
連続式蒸留焼酎アルコールが36度未満 かつ 以下のいずれかの条件を満たすもの
・アルコール含有物を連続式蒸留機により蒸留した酒類
・上記に水、砂糖、政令で定める物品を加えたもので、エキス分(※)が2度未満のもの
 *原容量100㎤中に含有する不揮発性成分のグラム数

ただし以下は除く
・発芽させた穀類または果実を原料の全部または一部としたもの
・しらかばの炭、政令で定めるもので濾したもの
・含糖質物を原料の全部または一部としたもので、そのアルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のもの
・アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの
単式蒸留焼酎アルコールが45度未満かつ発酵させたアルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機により蒸留した酒類
かつ以下のいずれかの条件を満たすもの
・穀類または芋類、これらの麹、水を原料としたもの
・穀類の麹、水を原料としたもの
・清酒かす、水を原料としたもの、清酒かす、米、米麹、水を原料としたもの
・砂糖・米麹・水を原料としたもの
・穀類または芋類、これらの麹、水、政令で定める物品を原料としたもの
 *政令で定める物品は穀類、芋類、これらの麹の合計重量100%以内
・上記6種以外の酒類
・上記6種以外の酒類に砂糖、政令で定める物品を加えたもので、エキス分(※)が2度未満のもの
 *原容量100㎤中に含有する不揮発性成分のグラム数

ただし以下は除く
・発芽させた穀類または果実を原料の全部または一部としたもの
・しらかばの炭、政令で定めるもので濾したもの
・含糖質物を原料の全部または一部としたもので、そのアルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のもの
・アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの
ウイスキー 以下のいずれかの条件を満たすもの
・発芽させた穀類、水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもので、蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のもの
・発芽させた穀類・水によって穀類を糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもので、蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のもの
・上記2種にアルコール、スピリッツ、香味料、色素、水のいずれかを加えたもの
 *上記2種のアルコール分が、加えたあとのアルコールの総量の10%以上

ただし以下は除く
・しらかばの炭、政令で定めるもので濾したもの
・含糖質物を原料の全部または一部としたもので、そのアルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のもの
・アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの
ブランデー以下のいずれかの条件を満たすもの
・果実もしくは果実、水を原料として発酵させたアルコール含有物または果実酒を蒸留したもので、蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のもの
・上記にアルコール、スピリッツ、香味料、色素、水のいずれかを加えたもの
 *上記のアルコール分が、加えたあとのアルコールの総量の10%以上

ただし以下は除く
・しらかばの炭、政令で定めるもので濾したもの
・含糖質物を原料の全部または一部としたもので、そのアルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のもの
・アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの
原料用アルコール以下のすべての条件を満たすもの
・アルコールが45度超
・アルコール度数の規定以外、連続式蒸留焼酎もしくは単式蒸留焼酎に該当する
・水以外の物品を加えていない
スピリッツアルコール含有物を蒸留したもの かつ エキス分(※)が2度未満 かつ 以下の酒類には分類されないもの
*原容量100㎤中に含有する不揮発性成分のグラム数
・ビール、発泡酒
・清酒、果実酒、その他の醸造酒
・連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール
・合成清酒、みりん甘味果実酒

「焼酎」は日本の伝統的な蒸留酒で、米、麦、芋、そば、黒糖など様々な原料から作られます。一般的に「連続式蒸留焼酎」のことを「甲類」、「単式蒸留焼酎」のことを「乙類」「本格焼酎」と呼びます。また、「泡盛」はタイ米を原料に黒麹菌を使用して発酵させ、単式蒸留機で蒸留して造られます。そのため、酒類の分類としては「単式蒸留焼酎」になります。

「原料用アルコール」は、主に他の酒類の製造に使用されます。焼酎やみりんの原料として、あるいはリキュールのベースとして重要な役割を果たしています。そのまま飲用されることは少ないですが、酒類製造における重要な基礎材料です。

「スピリッツ」は、穀物や糖蜜や果実などを発酵させて蒸留したお酒で、「ラム」「ジン」「ウォッカ」などが含まれます。定義が少しわかりづらいですが、他のお酒に分類されない、エキス分が2度未満の蒸留酒がスピリッツと考えると整理しやすいでしょう。

混成酒類

混成酒類には「合成清酒」「みりん」「甘味果実酒」「リキュール」「粉末酒」「雑酒」が含まれており、各々の定義は次の通りです。

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種類定義
合成清酒以下をすべて満たした上で
・アルコールが16度未満
・エキス分(※)が5度以上
 *原容量100㎤中に含有する不揮発性成分のグラム数
・政令で定める要件を満たすもの
・香味・色沢・性質・状態が清酒に類似するもの

以下のいずれかとぶどう糖・政令で定める物品を原料として製造した酒類
・アルコール
・焼酎(水以外の物品を加えたものを除く)
・清酒
 *原料として米を使用している場合は、米の重量の合計がアルコール分20度に換算した場合の当該酒類の重量の5%を超えないものに限る
みりん以下をすべて満たした上で
・アルコールが15度未満
・エキス分(※)が40度以上
 *原容量100㎤中に含有する不揮発性成分のグラム数
・政令で定める要件を満たすもの

以下のいずれかの条件を満たすもの
・米、米麹に焼酎またはアルコールを加えて、こしたもの
・米・米麹・焼酎またはアルコールにみりん、政令で定める物品を加えて、こしたもの
・みりんに焼酎またはアルコールを加えたもの
・みりんにみりんかすを加えて、こしたもの
甘味果実酒果実酒にあてはまらない かつ 以下のいずれかの条件を満たすもの
・果実または果実、水に糖類を加えて発酵させたもの
・以下酒類に糖類を加えて発酵させたもの
 ・果実または果実、水に糖類を加えて発酵させて造られた果実酒
 ・果実または果実、水を原料として発酵させて造られた果実酒
 ・果実または果実、水に糖類を加えて発酵させたもの
・上記2種もしくは以下酒類にブランデー、アルコール、スピリッツ、糖類、香味料、色素、水のいずれかを加えたもの
 ・果実または果実、水に糖類を加えて発酵させて造られた果実酒
 ・果実または果実、水を原料として発酵させて造られた果実酒
 ・上記2種に糖類を加えて発酵させて造られた果実酒
 ・果実または果実、水に糖類を加えて発酵させたもの
  *酒類を追加する場合、加えたあとのアルコールの総量の90%以内
・果実酒または上記3種の酒類に植物を浸してその成分を浸出させたもの
・果実酒または上記3種の酒類に薬剤を加えたもの
・果実酒または上記3種の酒類にブランデー、糖類、香味料、色素、水のいずれかを加えたもの
リキュール酒類と糖類その他の物品を原料とした酒類 かつ これまでに記載した酒類に属さない かつ エキス分(※)が2度以上のもの
*原容量100㎤中に含有する不揮発性成分のグラム数
粉末酒溶解してアルコール1度以上の飲料とすることができる粉末状の酒類
雑酒これまでに記載した酒類に属さない酒類

「みりん」は、日本料理に欠かせない調味料としても知られていますが、酒税法上はれっきとした酒類です。もち米と米麹、焼酎または醸造アルコールを原料として作られます。本みりんは酒税が課されますが、料理用のみりんは塩分を加えることで「みりん風調味料」として酒税の対象外となっています。そのため、みりん風調味料であれば20歳未満でも購入することができます。

「リキュール」は、蒸留酒や醸造酒をベースに、果実や植物、スパイスなどの風味成分を浸出または添加し、さらに糖類を加えて甘味をつけたお酒です。多くの方が家庭で梅やフルーツなどを漬け込んで作っている「自家製果実酒」も酒税法上は「リキュール」に分類されます。家庭で作る梅酒などは、すでに完成している焼酎やホワイトリカーに果実を漬け込み、糖分を加えて作ります。この方法では果実自体の発酵は行われず、既存のアルコールに果実の風味を付けているだけなので、酒税法上は「リキュール」に分類されるのです。市販の梅酒に「果実酒」ではなく「リキュール(梅酒)」と表示されているものがありますが、これは酒税法上の分類に則った正確な表示なのです。

「雑酒」は、どのカテゴリーにも当てはまらない酒類の総称です。以前は「第三のビール」と呼ばれる発泡性の低アルコール飲料の一部や、韓国の伝統酒「マッコリ」などが含まれていましたが、酒税法の改正により品目が変更になったため、現在はほとんど対象がないものになります。

酒類18分類を知って楽しむお酒の新たな魅力

日本の酒税法に基づく18分類を理解することは、単なる知識の蓄積にとどまらず、お酒の楽しみ方を大きく広げてくれます。それぞれの分類の特徴や背景を知ることで、より意識的にお酒を選び、味わい、その魅力を最大限に楽しむことができるようになるでしょう。

例えば、いつも飲んでいるビールの代わりに、同じ発泡性酒類のベルギービールに挑戦してみると、新しい味わいの発見につながります。また、普段は清酒を好む方なら、同じ醸造酒でも果実酒を試してみることで、多様性を楽しむことができます。

最後に、お酒の分類を知ることで、より専門的な会話を楽しむこともできます。バーやレストランでソムリエやバーテンダーと話す際に、適切な用語で会話ができれば、より充実したサービスを受けられるかもしれません。また、お酒好きの友人との会話も深まり、共通の趣味としてのコミュニケーションが広がるでしょう。

酒税法に基づく18分類は、単なる税制上の区分ではなく、お酒の世界を体系的に理解するための貴重な「地図」です。この地図を手に、これまで知らなかったお酒の領域に足を踏み入れてみると、新たな発見と感動が待っているかもしれません。ぜひ、これまでの「なんとなく」の選択から一歩進んで、意識的にお酒を選び、味わってみてください。酒税法の18分類という新たな視点を持つことで、お酒の楽しみ方はきっと何倍にも広がることでしょう。